Lingual 見えにくい裏側からの舌側矯正とは
一般的な矯正治療の方法は、1本の歯に対して1つのブラケットという装置をつけ、そこにワイヤーを通して歯を動かすというものです。これを「マルチブラケット法」といい、多くの方がイメージする矯正治療の方法です。
この装置は、通常の場合歯の表側につけるので「表側矯正」といわれています。どのような症状にも適用できる優れた装置ですが、装置が外から見えるので、審美面でのマイナスイメージがあります。
一方の「舌側矯正」は、このブラケットとワイヤーを歯の裏側につける方法です。「リンガル矯正」ともよばれ、装置を外から見られることなく治療できるのが特徴です。
「装置が見えると恥ずかしい」「人前に出る仕事なので装置がなるべく見えない方がいい」など、矯正治療中の見た目を気にされる方でも、審美面でのデメリットを感じず治療を進められます。
こんな方におすすめです
- 治療中の装置が⽬⽴つのがイヤ
- 他人の目が気になる
- 治療期間はできるだけ短くしたい
- スポーツ中の接触で口内をけがしないか心配
- とくに前歯が気になっている
舌側矯正の特徴
舌側矯正は矯正装置が歯に隠れるので、ほかの人からは装置が見えにくくなります。
また、装置を装着すると歯を磨きにくくなりますが、歯の裏側は唾液が出やすく自浄作用が働くので虫歯のリスクを抑えられます。
このほか、舌で歯を押し出す癖を直せる、突出した口元の矯正に適している、などの特徴があります。
舌側矯正で治療するメリット
MERIT01.装置が見えにくい
矯正装置が歯に隠れるのでほかの人からは見えにくく、矯正治療中であることもほとんど気づかれません。
MERIT02.前歯を引っ込めやすい
突出した前歯を後ろに引き込む矯正治療では奥歯を固定源にすることがありますが、表側矯正では奥歯そのものが動いてしまうケースがあります。
舌側矯正であれば固定源にした奥歯が動きにくく、前歯をしっかり引っ張れるのでスムーズに治療できます。
MERIT03.舌癖を防止する
舌で歯の裏側を押してしまう癖(舌癖)があると歯が計画どおりに動かなくなるほか、矯正した歯が元の状態に戻ろうとする「後戻り」を促すおそれがあります。
歯の裏側に装置がついていると、舌癖が自然に解消されます。
MERIT04.虫歯になりにくい
唾液は口の中を殺菌し歯を再石灰化する働きがあるので、虫歯予防にも関係します。
歯の裏側は唾液が出やすく洗浄されているため、細菌が増えにくくなります。矯正装置がついて歯の裏側が磨きにくくても、虫歯になりにくいといえます。
MERIT05.エナメル質を傷つけない
歯の表面にはエナメル質とよばれる硬い層があります。表側矯正は矯正装置を外す際に歯の表面を傷つけてしまうおそれがありますが、舌側矯正は装置を歯の裏側につけているので、外す際にエナメル質にダメージを与えません。
MERIT06.スポーツで唇を傷つけない
矯正治療中は、スポーツなどで口元に衝撃を受けると装置が当たってけがをするおそれがあります。舌側矯正は装置が歯の裏側にあるので、唇を傷つけません。
MERIT07.ホワイトニングできる
舌側矯正であれば、装置をつけている間でもホワイトニングを受けられます。
デメリット
違和感がある
舌が装置に当たるので、治療をはじめたころは違和感を覚える場合があります。1~2週間くらいで慣れてきます。
発音しづらい
矯正装置のつけはじめは発音しづらく感じるかもしれません。とくに、舌が歯の裏側に当たる「さ行」「た行」「ら行」が発音しづらくなりますが、1~2ヵ月もすると慣れてきます。
治療費が高額になる
歯の裏側は表側に比べると複雑な形状をしており、患者さま一人ひとりに合わせた矯正装置を用意しなければなりません。そのため精密な技術が必要となり、費用が表側矯正より高くなる傾向にあります。
- ・機能性や審美性を重視するため自費(保険適用外)での診療となり、保険診療よりも高額になります。
- ・最初は矯正装置による不快感、痛みなどがあります。数日から1~2週間で慣れることが多いです。
- ・治療期間は症例により異なりますが、成人矯正や永久歯がすべて生え揃っている場合は、一般的に1年半~3年を要します。小児矯正においては、混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する時期)に行なう第1期治療で1~2年、永久歯がすべて生え揃った後に行なう第2期治療で1~2年半を要することがあります。
- ・歯の動き方には個人差があるため、治療期間が予想より長期化することがあります。
- ・装置や顎間ゴムの扱い方、定期的な通院など、矯正治療では患者さまのご協力がたいへん重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
- ・治療中は、装置がついているため歯が磨きにくくなります。虫歯や歯周病のリスクが高まるので、丁寧な歯磨きや定期メンテナンスの受診が大切です。また、歯が動くことで見えなかった虫歯が見えるようになることもあります。
- ・歯を動かすことにより歯根が吸収され、短くなることがあります。また、歯肉が痩せて下がることがあります。
- ・ごくまれに、歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
- ・ごくまれに、歯を動かすことで神経に障害を与え、神経が壊死することがあります。
- ・治療中に金属などのアレルギー症状が出ることがあります。
- ・治療中に、「顎関節で音が鳴る、顎が痛い、口をあけにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
- ・問題が生じた場合、当初の治療計画を変更することがあります。
- ・歯の形状の修正や、噛み合わせの微調整を行なうことがあります。
- ・矯正装置を誤飲する可能性があります。
- ・装置を外すときに、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、補綴物(被せ物など)の一部が破損することがあります。
- ・装置を外した後、保定装置を指示どおりに使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
- ・装置を外した後、現在の噛み合わせに合わせて補綴物(被せ物など)の作製や虫歯治療などをやり直す可能性があります。
- ・顎の成長発育により、噛み合わせや歯並びが変化する可能性があります。
- ・治療後に親知らずが生えて、歯列に凹凸が生じる可能性があります。
- ・加齢や歯周病などにより歯を支える骨が痩せると、歯並びや噛み合わせが変化することがあります。その場合、再治療が必要になることがあります。
- ・矯正治療は、一度始めると元の状態に戻すことが難しくなります。